「ぅっ……ック………」





「い…ちごちゃ………泣か…ぃで……」



「だってっ……ック……」






「だぃじょ……だよ………。わた……しいち…ごちゃ……に」
「ヤだよぉーー」







「……ま…た………ぇるよ……………だか……ら…           」












>>> 泣かないで  1












っっ!!!」






伸ばした手は誰に届くことなく空しく掲げられていた






「……夢、か」





その手を額に乗せると、柄にもなく額には汗がにじみ出ていた



上腿を起こしベッドに端座位になる





……




「久しぶりに見たぜ…あの日のこと」




カレンダーを見ると今日の日付に赤いペンで丸印がついてある




「そっか……今日だったもんな…」
「何が今日なのだ?」




押入れが開き、制服姿のルキアが出てきた


もぉ慣れちまって驚きゃしねぇけどな





「別に何でもねぇよ」


「何だ人が親切に心配してやっているというのに。そんなことより、そろそろ支度をせねば遅刻するぞ」





「あ〜……俺今日学校休むわ」


「何?」




窓枠に足を掛け、いつもの如く窓から出て行く体制のままルキアは振り向いた





「ちょっと用事があってな。どうしても行かなきゃなんねぇトコがあんだ」


「………貴様、前にも同じような感じの日があったな」




「あぁ……。まぁ、同じかな。        今日はの…俺の幼馴染の命日なんだよ」


「幼馴染?初めて聞いたぞ」

「いや、言ってねぇし」



「まぁ良かろう。そのかわり!!虚が現れたら」
「わかってる」





ルキアは「それなら」と窓から姿を消した



俺も支度をすませ家を出た

















ぽつんとある小さな墓前に買ったばかりの花を添える




「よぉ、久しぶりだな」




















「うへ〜、知らなかった〜。竜貴ちゃんと黒崎君にもう一人幼馴染が居たなんて」


「まぁ…ね。あたしも一護も好んではその話しなかったし」



(一護と     今朝言っていた幼馴染、か)





竜貴と織姫の会話にルキアも聞き耳を立てていた




「それで黒崎君今日その子のお墓参りにいっててお休みなんだぁ」


「そ。毎年あいつはおばさんの命日と、、あ、幼馴染の名前だけど、あの子の命日には必ず行ってる」



「でも、何でその子死んじゃったの?交通事故かなにか?」





一瞬竜貴の表情が硬くなったのをルキアは見逃さなかった






「アレは……事故なんかじゃない………。               殺されたんだ……」




ルキアと織姫は一瞬息を呑んだ




「殺された…って」


「犯人は捕まってない……。一緒に居たのはまだ8歳だった一護だけ」




(目の前で殺されたのか…)




今朝の一護の寝言…


あれはその頃の夢を見たに違いない





「あいつ、泣きながら誰も居なかったのに急にが血を出して倒れたって何度も言ってた…」




(誰も居ないのに倒れた!?………まさかこれも虚の!?)




























が死んだのは今日でちょうど7年前


それも俺を庇って


その時の俺にはどうすることも出来なくてただ泣くしかできなかった



今思えば、はただ死んだんじゃない




殺されたんだ





「俺今お前を殺したやつらと戦ってんだぜ」





そぉ



を殺したのは       "虚"


それに気づいたのは最近だった


死神・朽木ルキアにあって




「そいつに聞いたんだけどよ。死んだら尸魂界ってとこに行くんだってな。しかも霊圧の強いやつは死神になれる。もしかしたらお前もう死神になってたりして」



なんて、俺がただ単にそうだったら逢える確立があるって自分勝手な思い込みしてるだけなんだけどな





それから俺はルキアに呼び出されることもなく、ずっとの墓前で昔話や近況報告をした













「あ、お兄ちゃんお帰りぃ〜」

「おう、ただいま」




家に帰れば何事もなかったかのようにいつもの俺に戻る




「一兄今日姉のトコ行ってたんでしょ?」

「あぁ、まぁな。ってかお前らよくそんなガキの頃のこと覚えてるよなぁ」



こいつらが4歳くらいのことなのに、2人とものことは覚えていた




「ん〜、何でだかお姉ちゃんのことは少しだけど覚えてるんだよねぇ」

「そう言えば姉も一兄みたいに見えたり話せたりしたよね」


「あ?あぁ。あの頃は俺よりしっかりと見えてたんじゃねぇか?」





そのせいでは死んじまった


見えすぎて、優しすぎて


狙われてたのは俺だったはずなのに……






部屋に戻った俺は机の引き出しから一枚の写真を取り出しベッドに背をゆだねるように床に座り込んだ




俺と竜貴、そして真ん中で俺たちと腕を組んで幸せそうに笑っている






「それが貴様の幼馴染か?」




写真に陰が落ちたかと思えば上から覗き込むかのようにルキアが居た


咄嗟に俺は写真をしまおうとしたが




「っておい!勝手に見るんじゃねぇ!」


「良いではないか、減るものでもあるまい」



ルキアは俺から奪った写真を見て一瞬眉を潜めた



「何だよ」


「いや……貴様の幼馴染は確か、、と言ったな?」


「あぁ。それがどうした」


「………いや、気のせいだろう」




何かひっかかるが俺はそれ以上聞く事はしなかった









(………まさかとは思うが……)





一護の幼馴染の顔が何故か気になる……


似ているだけ…か……




ルキアの頭に過ぎった元気で明るい少女の姿


尸魂界で親友とも呼べる仲だった




















時は静かに流れ続ける



一護の時


ルキアの時




そして       ……









「十番隊第三席 。入ります」





彼女の時も







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